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不動産鑑定徒然草 (2009/09/17 by 山口 隆)
                                                                                                                                                印刷用<click here>


バブルの原因は何だったのか - 総括 -

☆高騰→崩壊→不良債権→不況→国債増加‥は何度も繰り返せない
☆バブルであることの共通認識を危険ライン前に持てる環境の整備を!

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日本の不動産鑑定評価は、昭和30年代以降の著しい地価高騰の反省の中から生まれました。
日本が参考にした米国の不動産鑑定評価は1930年代に世界大恐慌の反省の中から生まれたものです。
双方とも「現状では弊害が大きすぎる」→「理性的に見る必要がある」→「対極=現状」を強く意識して生まれました。
(例:適正な価格形成の困難性:価格形成要因が複雑、市場が不透明、取引きは個別事情を含みがち。例:土地基本法
  第4条..土地は投機的取引の対象とされてはならない←「対極=現状:投機多発(需給逼迫、波及、遊休化、公共事業を
  阻害)」。例:心理学的には人の頭の中で作られる需給数は実際の需給数と異なりがち→ 相場観が前者に影響される)

それ故、不動産鑑定では理性的な立場に立って価値Value を求めています(価値Valueは基本、価格Priceは現象)。
→ 多く場合、「market value」(国際基準・米国基準)、「市場価値(market value)を表示する適正な価格」(日本基準)。

他方で、「対極」には科学の目が届いておらず、時が経つにつれ記憶が薄れるきらいもあります。
「経済がどう動くか知るにはマクロ経済理論にアニマルスピリットを組み込む必要がある」(Akerlof,Shiller)とのこと。
日頃当たり前すぎて気が付かない事の中に重要なヒントがある → 見方を借りて日本のバブルを振り返ってみました。


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(値上り期待需要の特徴) 「なるほどアニマルスピリット」(一部私見)

  (値上り期待需要 → 「いわゆる投機」だけでなく、「将来値上がりする」が動機になっている需要全体のこと)

・土地買い占め(地上げ)の限定価格は通常の価格ではないと何度も言われていた。
  しかし、気が付くと、人々は「地価が上がっている」と言い出していた。
  早い者勝ちの感情が伝播、居ても立ってもいられなくなる雰囲気が広がった。

・増幅の連鎖: 「賃料→価格→地価」、「地上げ」、「人間感情」 ‥                                                                           ←増幅
  国際化で事務所が足りなくなる、外資が高く借りてくれる、と風評が流れていた、
  事務所需要が逼迫(空室率1%未満)した東京都心部で、バブルへと繋がるアニマルスピリットの爆走が始まった。
  (chick-earthworm reflections)

・この需要は値上がり「期待」が高まる時期に急拡大、地域の需要を増加する。
  逆に、供給は値上がり「期待」が高まると一時的に減少する(待ち得)。    ←これがあるから買手の心に火がつく
  土地(空間)は急には追加供給できないため必要以上に上がってしまう。

・既に発生しているゲインに対してはリスクを嫌い、既に発生している損失に対してはリスクを負う。              ←転がし
  (上昇している時はゲインを確定するため早く売る。下落で含み損が出た時は売りたがらない)
  (fear is stronger than greed)

・貸付は投機を増幅する: Leverage: 「銀座が3倍になったから○○も倍にはなる」→ 元手3借入7=20、3→13の期待。
    → 第2次オイルショック後の不況で生じた赤字の補填等 → 一般化                                                                       ←増幅
  ある地域で発生した高騰(フロス)が、まだ上がっていない地域を目指して新型インフルエンザのように広がる(バブル)。

  ‥ <注.. ここまでの状況は貸付金利7-8%の高金利の中で起きていた (1983-85)>‥
         例:    神田(1983)日本橋(1983-84)勝どき(1985)元麻布(1985)田園調布(1985)
         比較: 綾瀬(1986)熱海(1988)延岡(なし)東松島(なし)

・金融機関が猛烈な融資拡大に走るとき、この需要と結びつきやすい(金余り運用難、貸付金利>余資運用利回り)。    ←増幅
  金利低下で融資推進は楽になった反面、仁義なき借換戦争に突入(固定を変動で盗る)、何でもありになったとのこと。
  成績グラフを伸ばすには‥内需拡大はそんなに早く大きく増えてクレナイ。この需要は財テクブーム相乗効果で増やセタ。
  上は現場を下は全体を見ずに動く: +αの利下げ→要報告→不要融資。過大な目標→現場の疲弊→不公平感→融資創造へ爆走。
  少数がやるうちは「良いこと」、皆がやると「悪いこと」 の認識の欠如。モラルも使命感も「いつのまにか消えていた」‥とのことである。
  (「借りてくれ、借りてくれ、借りてくれ〜!」「融資は喉から手が出るほど‥」「飢餓状態だった!」 vs しかし決算書にはそれが出ない)
  (upward spiral was fueled)

・「土地はもう買えなくなる」の焦燥感の発生、欠乏感の増幅。                                                                       ←増幅
  魅力のある土地には希少感が尖鋭化。ステータス感と相まって、天にも昇る価格が付いた(例:利回 1%)。
  崖地・残地・底地・無道路地‥にも第三者の買手が付いた。
  「最後は誰かが所得で負担・超成長期は永遠には続かない」ことは頭の中から半ば消えていた。
  (かぐや姫現象、恋は盲目、あばたも笑窪)

・価格上昇に耐えられない需要層への影響が深刻化、政治問題化。 ←大崩壊への牽引力
  日本のバブルでは住宅の第一次取得者層、    <一生働いても家が買えない>
    → 基礎: 自己資金、所得、返済割合、金利、融資制度の充実度、遠近・高安・狭広、etc.
  米国のバブルではサブプライム層だった。    <略奪的(肉食的)貸付の犠牲になった>
  バブルも最後はユーザーの負担力・新規供給等により崩れる。末期は赤字事業(販売不振)が散発した。
  しかし決め手は政治問題化だった→ 決定打は不動産向融資の総量規制:金がなければ続かない。
  (転売需要・第二次取得者需要(玉突現象)・法/税緩和措置等で危険ラインは見えにくかった)

・そして熱狂の時代が終わり、事後処理の時代が始まった。
  それでも言う人がいた「一度下がってまた上がる。○○は特別だ」。それにつられて損を出す人もいた。
  (事象が変化しても思潮は後を引く)

・金融機関の対応はイノベーター理論のように広がり、「レイトマジョリティ」に大きな破綻が生じた。
  「最後まで動かなかった金融機関」が格付AAAで生き残り注目された。
  (悲劇を予感して巻き起こる行動は、時に、より大きな悲劇を生む)
  (生物は命の源を将来に繋ぐために多様性を備えている)

・この需要は価格下落時に減少、「いよいよダメ」な時に放出、供給を増加しがち。波が大きいと疲弊も大きい。
  不良債権・BIS規制 →あんなに積極的だった金融機関が、今度は貸し渋りを始め景気悪化に拍車をかける。
  担保処分: 秘匿は購入者減・不明点リスク化で価格低下に繋がる。しかし秘匿する。 ←風評被害懸念+α
  +早期売却・競売・資産劣化・市況悪化・実需のみでは早期吸収困難な物件数と物件種類‥等々。
  (必要以上に価格が下がってしまう)

・この需要は実需とは異なる要因で動く(ゲインに着目した将来予測)。 →値上り期待ゆえ値上りする仕組み:
  予測:10億→20億 ⇒ 購入:12億・13億 ‥ 15億になってもゲインの期待 ⇒ 50%up の実績 ⇒ 買うから上がる。
      ⇒ それを聞き他人がまた「上がるから買う→買うから上がる」 ⇒ 将来の予想価格(打率?%)に基づく需要曲線。
  (投機理論は「人間」と「外部経済」を組込まなければ汎用化できない!)
  (将来予測は大きく外れないという前提の大崩壊!)

・この需要は、金余り/貸込み/低金利+行き過ぎた自信過剰の結果、需給の適正範囲を突き破って暴走することがある。

 → バブル期、この需要は通常の供給・最終需要の負担能力内で Stabilizer ではなく Amplifier として機能していた。
 → 金融機関の融資姿勢も Amplifier だった(晴れた日に傘を貸し雨になったら「返せ」(ハゲタカ) ←「創業の精神」の忘却)。
 → この需要が高い価格を提示して相場を先行、金融機関が融資でそれを支えたため、不動産の価格が株価のように動いた。
     ⇒ 楽観→熱狂→マニア→崩壊→悲観

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(再び起こさないために)

・なぜバブルが起きたか(キーワード)

  日本→「金余り、貸込・投機、土地神話、触媒としての低金利」
            (低金利は増価機能と触媒機能を分けて考える必要がある → 増価機能を超えた高騰が広がるのがバブル)
             長プラ8%→5%だけでバブルを説明するのは無理。過大な将来予測に基づく投資とそれを支える資金がなければ ←あった。

           (貿易黒字、大企業の銀行離れ、金融自由化への危機感があり、そして急激な円高が起きた)

           ☆預貸率が低下する危機感(預金>貸付)、円高パニックで外債が毒リンゴ化、金余り・余資運用難、金融自由化圧力 →猛烈な融資拡大。
                → 融資はかなり預金に戻る+貿易黒字/所得向上/円増加諸要因等で更に預金が増加 →猛烈な融資拡大
←Repeat 8t.
                          (注.. 皆がやると「悪循環」 ‥ しかし やらない者にも預貸率低下の付けが回る →やり始める)
           ☆地価上昇 →早い投資ほど大きなゲイン →担保価値up →益々借入可能
                                                                            → まだ上がっていない地域へ拡散 → 値上り期待の伝播 ←Repeat
           ☆土地神話:超成長期感覚が低成長期に後を引いた(初任給1万:坪1万(周辺畑・融資貧弱)→30年後13万:坪130万)。
              (注..成功の連続に起因する過信が神話化する要因もある。ミニバブル時にも神話があったとの業者証言あり)

           ⇒マネーサプライ増加 vs 物価安定 → 円高進行の下、「貸込→投機」のポンプで金余りが肥大化しながら土地.株に集積した。
              (注.. プラザ合意(1985)後の急激な円高で外債運用減少・解約が発生、円高対策等と相まって、金余りに拍車がかかった)
              (注..「信用創造」×「少数取引が相場を形成」=元は想像よりずっと少ない金余りが、想像を絶する地価総額に繋がった)

  米国→ 1990年代後半、アジア危機を経て、世界から米国にマネーが集まる状況が作られた。株価高騰→崩落。 そして‥
            「株の下げ相場を嫌って住宅投資へマネーが流れた、安直な融資と低金利、持家促進政策が‥に繋がった」(S&P)。
            (日中はマネー供給大国→ 「貿易黒字は還流して安定」から、「世界金余りはどこに回れば安定?」に、見方が変わった。
              背景: 経済国際化・年金・IT・金融工学等の急成長 vs 国際政府不存在(在来線上を新幹線が爆走・薬事法無しの新薬流通)

・改めて感じるのは事前抑制の著しい難しさ

      暴走は一者の善行では止まらない(競争市場ゆえ他者に食われる)。
      総量規制がもう1-2年早ければここまでひどいことにはならなかっただろうと言われていた。
        しかし共通認識が未成熟な段階での行政指導は「神の手にならず」激しい怨嗟を生む(例:ミニバブル)。
      特定の地域だけ・不動産だけの金利政策は至難。他の課題(例:円高/地方不況)が重なるとき伝播している。
      今回の世界金融危機を踏まえた金融規制強化は当然だ! しかし超長期的には‥
        規制は固着化=変化に対応できない弱点を併せ持つ。「やがて改革派が現れ全て壊す」が歴史の教訓。
      崩壊前は熱狂と好景気が支配、破滅的段階で国民の非難が高まる。政治的意思の形成には時間がかかる。
      何よりも、今回の米国の例では、議会やFRBで検討しても「バブルと結論が出ないまま」崩壊の日を迎えた。

      ‥最も深いところにある問題は‥<バブルと気が付かない>‥そして世代や状況が変わると繰り返すこと‥

・もう一つ「暴走しないための Stabilizer 」が必要だ!

  → バブルの中にいてバブルと気が付かない理由の一つは、それが日頃当たり前すぎて気が付かない本能的な動きだから。
      (アニマルスピリットで見ると:
        投機価格は 命令無しに集団が動く仕組み少数が多数化する連鎖反応秩序出現群知能 のようなもので動いている)
      (ごく少数が先行→少数が相場形成→全体の水準が変化→価値に引かれ(収益性・費用性・市場性等)無限に発散せず振動する

  → 不動産は少数の取引きが相場を形成、桁違いの数が担保となっており、価格変動が経済に大きな影響を与える資産。
      (比較:日本列島改造論→投機多発(総数比では僅か)→地価高騰→物価高騰繋がった。←実需旺盛・成長期・レバレッジ小)

  → バブルであることの共通認識を危険ライン前に持てる環境の整備が必要だ!
      「値上り期待」の正確なフォロー(地域別まで)+実需実物市場への雪崩込みを緩和する遊水地!
      (金余りと国際化の時代、今後も、国境を越えて短期間に増減する基礎的条件があるとの見方もある)
      (短期的利益の追求・長期に責任を負わないなら:価格つり上げと売り抜け→富の再分配→投資マネーへ)
      (金余りの進行は運用圧力を生む:運用利回り低下→急に下げられないものの存在:人件費率・物件費率・確定給付○○‥)
      (金余りは元をたどれば私達が作っている(NHK)、そして年金基金の例:運用圧力→無理な運用→行き過ぎた投機→高騰崩落)
      (アニマルスピリット対策は第一に正確な情報。例:「親の高利回り→子の住宅難」が資金追跡できれば親の行動は変わるだろう)

  → 例:下記の動きを長期統計化 →参加者自らが危険ラインを意識しながら行動できる環境づくり。
      例:不動産取引時にはアンケート提出が必要+守秘義務 →例:それがなければ登記できない。
      例:全取引をIT迅速集計(伝播速度に対応:例:東京都心→周辺+大阪1年・全国2-3年)

       ・値上り期待による価格変化の「発生源」と「感染経路」の把握
       ・現在から来た需給数・将来から来た需要数・過去から来た供給数の把握(地域別まで)
       ・成約価格水準を投機・実需別に長期統計化(地域別まで)
       ・賃貸物件、オペレーショナルアセットは取引利回りも把握
       ・値上り期待の感染率・発症率の把握
       ・台風や新型インフルエンザのようにシミュレーション

         【新型インフルエンザに例えるならば】
          ⇒ 昔は、新型発生のメカニズム不明→発生源・感染経路不明→感染率発症率不明→症状を見て診断→強制隔離。
          ⇒ 今は、新型発生のメカニズム判明→発生源・感染経路判明→感染率発症率統計化・解析・シミュレーション可能
                →検査キット・MRIで診断→高度な治療。

      1. 自己使用不動産
      2. 販売用不動産
          a. 棚卸資産(通常)
          b. 棚卸資産(短期的値上がりを期待)
      3. 投資不動産
          a. 賃貸収入目的
          b. 賃貸収入目的と資本増価目的両方
          c. 資本増価目的(長期)
          d. 資本増価目的(短期)                                                       <市場の透明化!>

        ↑ 注
          (資本増価目的には住宅も含む。短期は1年以内ではない)


            続きを読む (click here) → 2.群知能


      <目次>
       1. 「バブルの原因は何だったのか - 総括 -」                 ← We are here!
       2. 「バブルの原因は何だったのか - 群知能 -」
       3. 「バブルの原因は何だったのか - 投機熱の伝播 -」
       4. 「バブルの原因は何だったのか - 投機.価格.価値の遺伝子 -」
       5. 「バブルの原因は何だったのか - 新型発生のメカニズム -」
       6. 「BOIDSとインフレ期待」
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